<<第70回:契約解除日の連絡日を確認しておく【賃貸不動産物件の退去】
記事のポイント
- 原状回復の基準には、国土交通省のガイドラインがある
- 特約でガイドラインを超える修繕義務を課すことも可能
国土交通省のガイドラインを参考にする
借主は、退去時に元の状態に修繕する原状回復の義務があります。その基準をつくるために、国土交通省は「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を定めました。基準は、借主の故意過失と善管注意義務違反です。たとえば、壁紙の日焼けや損耗等は通常の使用で発生するため貸主の負担です。子供の落書きやカビを放置した結果の変色などは借主の負担になります。壁紙の場合、変色させた部分だけ張り替えると、他部分の壁紙と差異がありすぎて原状回復していると言えません。一面部分は残存年数分を借主が負担して、残りを貸主が負担することになります。東京都では、賃貸住宅紛争防止条例に基づき、契約締結時には下記に基づく説明が義務づけられています。
原状回復の説明義務(東京都)
- 退去時における住宅の損耗等の復旧について(原状回復の基本的な考え方)
- 住宅の使用及び収益に必要な修繕について(入居中の修籍の基本的な考え方)
- 実際の契約における賃借人の負担内容について(特約の有無や内容)
- 入居中の設備等の修繕及び維持管理等に関する連絡先
善管注意義務
善良なる管理者の注意義務。一般的・客観的に要求される程度の注意義務のこと
賃貸住宅紛争防止条例
賃貸住宅の退去時の原状回復や入居中の修繕をめぐるトラブルを防止するために、あらかじめ書面にて借主に説明する義務を東京都の賃貸借契約で定めた東京都の条例のこと。東京ルールと呼ばれている。令和2年4月1日民法改正され法律に明記されるようになった
設備等の経過年数と借主の負担割合(耐用年数6年及び8年・定額法の場合)
ただし、ガイドラインは絶対的な基準ではありません。特約で基準を超えた修繕義務を賃借人に負ってもらうことも可能です。この特約は賃借人に法律上・社会通念上とは別の新たな義務を課すため、以下の3つの条件が必要です。
特約のための3つの条件
- 特約の必要性があり、かつ暴利的でないなどの客観的・合理的理由が存在する
- 賃借人が特約によって「通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務」を負うことについて認識していること
- 賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること
入居時にチェックリストを作成する
賃貸借期間が長くなると、入居時の状況が不明になり、退去時の原状回復を巡ったトラブルが増えます。このようなトラブルを防ぐためには、入居時の状況を借主・貸主共に記録しておくことが大切です。
入居時の記録
貸主側や管理会社がチェックリストを作成します。照らし合わせて、傷や損耗がある箇所、不具合等を間取り図に借り主が記入します。
まとめ
- 原状回復の基準は借主の故意過失と善管注意義務違反
- 減価償却の残存年数を借主が負担する
- 入居時の状況を記録することでトラブルを回避できる