<<第76回:新法借地で借地期間が変わった【新法借地と旧法借地の違い】
記事のポイント
- 借地権の更新には「合意更新」と「法定更新」の2種類がある
- 法定更新される時点で信頼関係はすでに崩れている
合意更新と法定更新の違い
借地権の更新には、「合意更新」と「法定更新」の2種類があります。合意更新はお互いが合意したうえでの更新なのに対して、法定更新は自動的に契約期間が更新されます。更新料の支払い義務等の借地借家法の条文がないため、契約の特約事項で支払いを明記していなければ、法定更新の際に法律上は更新料を支払う必要はありません。
更新料の支払いがないことは地主にとって契約解除の原因になりえますが、実際の契約解除は簡単ではありません。それだけ借地権者の権利が保護されています。しかし、あまりにも高額な更新料でない限り、トラブルを避けるために応じたほうが良いでしょう。
法定更新の期間
建物朽廃と老朽化の違い
旧法借地においては、建物朽廃すると借地期間終了ともに借地権も消滅します。建物朽廃(たてものきゅうはい)とは、自然推移により建物が腐朽損壊(ふきゅうそんかい)し、建物自体が経済的社会的効用を失い、通常の修繕程度では人が住める状態ではないことです。建物が古くなっただけでは「老朽化」と呼ばれる状態で、借地権消滅は認められません。建物朽廃は屋根もなく骨組みだけの状態で修繕しようがない状況などを指しますので、借地権を取り戻したい地主が裁判で建物朽廃を主張しても、借地権消滅はなかなか認められないのが現状です。
また、地主と借地権者との間で合意更新された場合も、建物朽廃での借地権消滅は認められません。あくまでも法定更新された場合のみ借地権消滅が認められます。信頼関係を維持し、更新料支払いの問題も円満に解決させるためには、お互いの立場を理解したうえで合意更新することが大切です。借地権の更新料の相場は更地価格の3%~5%とされていますが、そこにこだわりすぎずお互いの合意点を見つけ出しましょう。
腐朽損壊
基礎、柱、梁等がいちじるしく損壊しており雨や風がしのげず人が住める状態ではないこと。
老朽化
建物の年数経過により品質や性能が劣っている状況になること。直ちに人が住めない状況ではないが、修繕が必要な状況であること
地主と借地権者の立場
地主の立場
- 更新料をしっかりと借地権者から支払ってもらいたいと思っている
- 借地借家法上では更新料の支払い義務がないことを理解する
- 建物朽廃により借地権消滅を裁判所で認めた事例は少ない
- 議渡承諾等を拒絶しても借地非訟手続きにより裁判所が地主の代わりに許可できる
借地権者の立場
- 更新料は支払いたくないと思っている
- 借地借家法上では更新料の支払い義務はないことを理解する
- 合意更新しなくても法定更新で地代支払いを続ければ借地権は継続できる
- 法定更新になると建物朽廃で借地権消滅を地主から主張されるリスクがある
- 法定更新になると建て替え承諾や譲渡承諾等を地主から取得しにくくなる
まとめ
- 更新料の支払いがなくても簡単に契約解除はできない
- 旧法借地では、建物朽廃すると借地権が消減する
- お互いの立場を理解したうえて合意更新することが大切